人間嫌いで仕事に打ち込んできた童貞ジジイが人生で初めて恋に落ちた話に学ぶ愛の真実『鑑定士と顔のない依頼人』
英題:THE BEST OFFER
制作年:2013年
制作国:イタリア
上映時間:2時間11分
ストーリー
天才的な審美眼を誇る美術鑑定士ヴァージル・オールドマン(ジェフリー・ラッシュ)は、資産家の両親が遺(のこ)した美術品を査定してほしいという依頼を受ける。屋敷を訪ねるも依頼人の女性クレア(シルヴィア・フークス)は決して姿を現さず不信感を抱くヴァージルだったが、歴史的価値を持つ美術品の一部を見つける。その調査と共に依頼人の身辺を探る彼は……。(シネマ・トゥデイより)
まずですね私はこの主人公役の俳優さんが大!大!大好き♡なんですよ。
現在65歳。パイレーツ・オブ・カリビアンのヘクター・バルボッサ役でも有名ですね。
すでに65歳の名優なのですが私が彼に惚れこんだのは、なっちゃん・アカデミー賞の”人生で最も好きな映画10選”にノミネートされた『英国王のスピーチ』で、英国王の吃音症を矯正する言語療法士のライオネルの役からです。
英国王役のコリン・ファースも素晴らしかった。
実話を基に作られた映画で、大人の男の友情を描いた素晴らしい作品なのでぜひおすすめします。素晴らしい映画にエロ要素など1ミクロンもいらぬのお手本です。
さて『鑑定士と顔のない依頼人』についてですが、主人公ヴァージルは凄腕の鑑定士で、ずっと仕事に打ち込んできた人間嫌いの潔癖症。
自身がオークショニアを務めるオークションで、自分が欲しい作品の真価を公表せず友人に安値で落札させてはコレクションしているというまーまーなクズ。
コレクション部屋は厳重なセキュリティで誰も入れず、その部屋で自分が収集した美女の絵画コレクションを前にひとり悦に入っては恍惚するというど変態。
あの顔、完全にイってやがる・・・。
あれれ?これって現代のジャパニーズキモオタどもと同じじゃ??しかも童貞完全に童貞、絵を眺めながら食事をする徹底ぶり。
ある日「両親の遺した遺産を査定してよ」という依頼を受け、屋敷を訪ねる。
依頼人クレアは一切姿を見せない不思議ちゃん。
彼女の屋敷で見つけた金属部品を修理屋のロバートに調査させ、それが希少価値の高い18世紀の機械人形の一部であることが判明。
お屋敷に通ううちにヴァージルはクレアちゃんの姿が見たくって見たくってたまらなくなっていくんですよ。
その後クレアちゃんと交流を深めていくうちに彼女は彼にとってかけがえのない存在になっていくんです。
不思議ちゃんクレアに翻弄されながらもだんだん生き生きとしていくヴァージル。
ヤリチン男のロバートに恋のアドヴァイスなんか受けちゃったりして。
ある日ヴァージルはとうとう我慢できずにクレアちゃんの姿をこっそり拝むのですがその美貌に腰を抜かす。一気に本気の恋に落ちちゃうわけです。
そしてクレアちゃんの方も、爺童貞ヴァージルの不器用ながらも真摯な想いに心を開いていく。
あるあるあるあ・・・・ってねーよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
身の程わきまえろやジジイいいいいいい。
なんだこの童貞野郎の妄想のテンプレみたいな物語は。
世界を恐れているか弱い美女が自分だけに心を開いて両想いに~なんてあるわけねーだろいい加減にしろ!
万が一にも可能性があるとしたらクレアがさんざん男を喰ってきた1000人切りのビッチだった場合のみ。
男とさんざん遊んできた女は童貞の不器用さにキュンしちゃったりするんですよね。もう手のひらで転がすなんてお茶の子さいさいなんですよ。女はだれでも潜在的に女王様願望を持っているので「この子は私が育てた」とドヤりたいんだよねわかるわかるよ。
クレアもそうだよね?
だってこんなのあり得ないよ。
あざとすぎるんだよ「手伝ってくれる?」なんつってヴァージルにドレスの背中のファスナー上げさせたり。
そうじゃないとしたらとんでもないくそ映画だなと思っていたら。
【閲覧注意】以下ネタバレ含む
なんと物語は終盤でどんでん返し。
クレアに心底惚れたヴァージルは遂に禁断の間、コレクション部屋にクレアを招き入れる。
マジかよヴァージル。貴方そんなに歳くってて人間をそんな簡単に信用するんじゃねぇよ・・・。
クレアとの愛に生きていくことを決め、鑑定士を引退すると宣言したヴァージル。
最後のオークションを終え自宅に戻るヴァージル。
しかしそこにクレアの姿はない。
あれ?クレア?クレアちゃん?
クレアちゃーん!
「お出かけでは?」という使用人ののんきな言葉に「そうか」と答え、コレクョン部屋にクレアの母の絵を運ぶヴァージル。
部屋に踏み込んだヴァージルは息をのみ絵を落とす。
コレクションがすべて消えていた。
そこにいたのはロバートが組み立てていた機械人形。
「いかなる偽物の中にも本物は潜む」
と繰り返す機械人形。
絵には長年ヴァージルに手を貸してきたビリーのサイン。全てを悟るヴァージル。
そう、彼は最初から騙されていたのだ。
みんなグルだった。
クレアを始め修理屋のロバートもロバートの彼女も屋敷の使用人までも!!
首謀者はビリー。
自分の作品を認めてくれないヴァージルに恨みを募らせ、復讐をしたのだ。Oh・・・。
最後の最後で夢見る童貞に世界の冷酷さを突き付けた本作。
しかしですね。
全てを失ったはずのヴァージルですが、最後の最後までその表情はどこか穏やか。
愛を知ってしまったんですね。
序盤で見せた人間嫌いの変人の顔つきとは全然違う。
愛を失った悲しみは漂わせていても愛を知る前の彼とは全然違う。
機会人形ががこう言っています。
「いかなる偽物の中にも本物は潜む」と。
彼にとって現実で触れるクレアは彼が長年コレクションし続けてきた美女たちの絵よりも価値があるものとなってしまったのです。
例えそれが偽りの愛だったとしても。
切ないですね。
物語の冒頭でヴァージルは最初依頼人(クレア)に待ちぼうけを食らっています。
そのあとお詫びと再依頼の電話が再びあるのですが、これって首謀者のビリーが最後の最後で一度ヴァージルを陥れることに躊躇したんじゃないかと。
オークションで彼との息の合った落札劇に愉しさを再確認し、友を裏切ることにブレーキをかけたのではと。オタク同士の友情ですね。
その証拠に、一度目の電話の後のオークション後にヴァージルはクレアに待ちぼうけをくらい、そのあとビリーはヴァージルに「君には才能ないよ」とハッキリ言われています。
きっとあれはビリーの最後の心の叫びだったんでしょう。「君は一度も私の絵の才能を認めてくれたことがない。それだけが心残りだ。」と。
それに対してヴァージルは「絵が好きなだけじゃ一流にはなれん。」ときっぱり。
これがどんな屈辱か分かるよね?
絵が好きで好きで描くのも大好きで自分の絵の才能を認めて欲しくてたまらないのに「お前才能ねーからwwwww」と言われたんですよ。
その言葉で復讐を固く決心し、再びクレアに電話させたのではないでしょうか。
オマエらオタクどもはいつもものの言い方がヘタクソなんだよね。
君らの辞書にオブラードという単語はないんか。
何でも率直に言えば伝わると思ってんじゃねぇぞ。
唯一の救いはクレアが消える前に「何があってもあなたを愛してる」と言い残したことですね。
それがたとえ嘘であったとしても彼はその言葉を支えに生きていけるでしょう。
救いと同時に地獄でもありますね。
その言葉を信じこの先クレアを待ち続けるであろうヴァージルの姿を最後にエンドロールが流れ始めます。
恋愛慣れしていない童貞が分不相応な恋をしたり友をないがしろにするとこうなるぞってお話でした。
私の説明が不十分ですがこの映画は一度観るともう一度最初から見たくなります。
伏線となるセリフがあちこちに散りばめられているんですよ。
喫茶店にいる謎の人物が実はキーパーソンだったり。
哀れなジジイの哀しい物語を見て鬱りたい方はぜひどうぞ。